世界のトレンド・統計データから見る双極性障害

みなさんこんにちは。Bipolar Diaryのボランティアをしております、児玉と申します。

私達のチームでは家族やパートナーの支援を通して、双極性障害を中心とした精神疾患者の方々のための健康管理アプリを日々開発しております。

この記事を読む方は、双極性障害という病気を初めて聞く方もいらっしゃるかもしれません。

双極性障害は、鬱状態と躁状態または軽躁状態を繰り返す精神疾患の一つで、かつては躁鬱病と呼ばれていました。

この病気の日本国内における認知度はまだまだ低く、例えば鬱病と一度は診断されたものの、抑うつ状態と軽躁病、あるいは混合状態のエピソードが出現し、初めて躁鬱病であることがわかるというケースも多いと言われています。

一方、海外ではこの病気の知名度は高く、一般的に知られる精神疾患の一つだそうです。

以前アメリカに住んでいる私の友人にも、「Bipolar(双極性障害)は鬱病よりもよく聞く病気だよ」と言われ、日本と海外では状況がかなり違うのではないかと思わされました。

そこで今回は世界の双極性障害に関連する、様々なトレンドや統計データを集めてみました。

この病気における海外の状況を読み解くことで、今の日本の現状や今後を見通すヒントが見つかるはずです。それでは早速見ていきましょう。

鬱病と双極性障害の国別検索トレンド

画像が見えない場合は、PCもしくはブラウザのPCモードにてご覧ください。

こちらのデータはGoogle Trendsというツールを使って出した鬱病(Major Depressive Disorder)と双極性障害(Bipolar Disorder)のGoogle検索における過去5年間の世界のトレンドです。

このデータを見ると興味深いことに、日本国内における検索トレンドは約9:1で鬱病が高くなっているものの、アメリカやオーストラリア、ロシアなどでは実は双極性障害の方が検索のトレンド上では知名度の高い精神疾患となっています。

実際の患者数では、鬱病が世界人口の約3.4%、双極性障害が約0.6%(出典: Our World In Data )と言われており、この数字が必ずしも患者数と紐付いているわけではないですが、地域によって検索のトレンドはバラつきがあることがわかります。

これは私の考察ですが、海外ではカニエ・ウエスト(出典: NME JAPAN)やマライヤ・キャリー(出典:東洋経済オンライン)といった世界的に有名な俳優やミュージシャンの多くが、自ら双極性障害であることを告白しており、自身の向き合うメンタル・ヘルス問題に対して言及をしています。

日本でも最近元TOKIOの山口達也さん(出典:livedoor NEWS)が双極性障害と闘っていることがニュースで話題になり、少しずつ認知は広まっていますが、海外ではこういった検索上での話題性が実際の患者数に対し、検索トレンドを引き上げていると思われます。

国内における双極性障害の検索トレンド

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一方こちらのデータは国内における双極性障害のGoogle検索トレンドの傾向です。

全体的に認知度が上昇傾向にある中で2010年8月と2018年4月だけトレンド値が大きく上昇しています。

2010年8月といえば、ハリウッド女優のリンダ・ハミルトンの双極性障害を乗り越えた記事(出典: cyzo woman)が紹介されており、2018年4月にはマライアキャリーの双極性障害告白記事が日本でも話題になりました。

これらのニュースのように、日本国内からも精神疾患で苦しいんでいる人達に向けたメッセージを発信していく著名人が増えると、認知度はさらに上昇する可能性があることがわかります。

引き続き海外における統計データを見ていきます。

双極性障害患者の国別男女比

(出典: Our World In Data )

これは双極性障害患者の国別の男女比データになります。世界平均で見てみると、女性52%、男性48%と女性患者の方が若干多いことがわかります。

国別で見ていくと、双極性障害患者が最も少ない中国(0.3%)やインド(0.5%)では男女のバラつきはあまり見られませんが、ブラジルやイギリス、イタリア、フランス、ドイツなどの欧州では、双極性障害患者が1%前後存在しており、さらに男女比で見ると女性患者が相対的に多い傾向にあります。

日本では双極性障害患者の割合は0.7%ほど存在しており、他の双極性障害患者の多い国と同じく、女性の割合がやや多いようでした。

こちらのデータの元記事(出典: Our World In Data )によると、鬱病、不安障害、拒食症などの精神疾患は女性が多いのに対し、アルコール依存症やドラッグなどによる精神障害は男性の方が多いというデータがあり、女性は内的要因による精神障害、男性は外的要因による精神障害が発生しやすい傾向は国内外でも同じであることがわかります。

 

双極性障害患者の年代比較

(出典: Our World In Data )

こちらは全世界の双極性障害患者の年代比較データになります。

年代別で見ると、中央値の0.6%に対し、20-24歳が0.88%と最も高く、年齢が上がるに連れて割合が下がっていくことから20代以降の若い世代の患者が多いことがわかります。

このことから双極性障害という病気は若い頃に発症し、気分のコントロールなどを通して病気を乗り越えていく方が多い傾向にある病気であることがいえるかもしれません。

特に20代は就職や恋愛、結婚など、様々な変化の波に向き合う時期のため、それだけ悩みもたくさんあるし、自分一人で立ち向かっていくことはとても大変です。

このデータから家族や上の世代からのサポート、若い世代の就職支援などが、きっとこの病気で苦しむ20代以降の若い世代を救うためのアクションになると思います。

(出典: Our World In Data )

一方こちらのデータは鬱病患者で年代比較したデータになります。

こちらのデータを見ると今度は高齢者の鬱病患者が圧倒的に多く、中央値に対し50歳以上の鬱病患者数が倍近くに登ります。

「老人性うつ」という言葉があるように、日本で認知症と並んで認知されている高齢者の鬱病患者の割合は、世界でも同じ傾向であることがわかる一方、高齢化が社会問題となっている日本では、この問題がより深刻になっていくといえそうです。

これらのデータからライフステージの変化と精神疾患には何かしらの因果関係があるといえます

トレンド・統計データから見えること

世界のトレンドや統計データから切り出した事象に対する傾向を国内のデータと比較することで、その事象の社会全体における認知度であったり、今後の日本国内における動きを推察することが出来ます。

今回のデータから、日本社会全体として双極性障害患者のサポートをするために、例えば精神疾患に向き合っている20代の若い有名タレントやアスリートといった方々が、同世代の若者へ応援のメッセージを送ったり、家族や上の世代の方からのサポートとして、彼らの就職活動などの支援が必要になってくるはずです。一方で、これからますます高齢化が進む日本においては、やはり老人性うつという方向で引き続き鬱病が深刻な社会問題の一つとして広まっていきそうです。

今後もこのような海外サイトや記事から読み取ったブログ記事を掲載し、双極性障害患者の方々やそのご家族、パートナーの皆様に役立つ記事をご紹介していきたいと思います。

次回は今回の内容を掘り下げて、海外の事例から双極性障害の治療のための有用なデータとその記録方法についてご紹介していきたいと思います。


2019/06/30 追記:

Twitterでいただいたコメントを受け、双極性障害で苦しむ若い世代のサポートとして、家族や上の世代からのサポート、就職支援などもアクションプランとして必要と思い、追記させていただきました。

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